2006年08月23日

ジプシーの子。

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夜明け前。朝4時半。ブカレストから約200km北西にあるSighisoara(シギショーラ)に到着。

駅舎と言っても特になく、小さな売店兼待合所みたいなところが開いているだけ。お店の周辺には数人のホームレスが熟睡。

夜明けが来るまで売店小屋の中で待つ。
朝早い電車を待つ人達もいて、少し安心。
老夫婦が店に入って来て、私の直ぐ脇の席に座る。
東洋人の女が一人でこんな時間にこんなところにいるのがさぞかし気になるのか、ずーっと視線を感じる。

サインでもしてあげようかしら。


6時過ぎに夜が白み始める。

コインロッカーも荷物預けもないので仕方なく荷物を全て持って、駅から南に向かう。

駅前には野犬が多い。

地図を片手に、通勤の人達とすれ違う。

住宅街を抜けて白い教会、Saint Treime Orthodox Churchが、朝もやの中に現れる。
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Tarnova川に架かる橋を渡って、かつて要塞だった街へ。
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シギショーラは、ロケットを設計し、そのアイディアが”Woman on the Moon”という映画に用いられたりし、近代宇宙学の父の一人とされるHermann Oberthが少年時代の数年間を過ごした街。
街の中心近くにある広場は、彼の名前がつけられています。

広場のベンチには、家なき子3人が折り重なるように寝ている。

急勾配の坂を登っていくと時計台。(全体像を取るのを忘れた。)
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表と裏の両面にあるからくり時計は1時間置きに動きます。
入り口側は曜日をあらわす人形が。夜中の12時になると変わるけど、ライトアップがないので誰も見れないとのこと。
小さな鐘が時間分カンカンと可愛く鳴り響きます。

時計台の下をくぐって城内へ入ると、タイヤがなかったり、このままでは走らない自動車が数十台。中にはジプシーが睡眠中。

市場があるらしいけれど、準備中でまだ始まる気配なし。

周りを囲まれた階段を学生さんのグループと一緒に登っていくと、Church on the HillとGerman Cemetery。階段を上りきった時に、「Hello」とグループのうちの一人の女の子に言ったら、あからさまに嫌な顔。。。

教会から街の方へ坂を下って、路地をグルグル。

9時を前にレストランが開き始め、朝食にドーナツみたいなものにヨーグルトクリームとフルーツソース。
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お客さんはドイツ人が多いみたいで、そこらじゅうドイツ語の会話。

レストランを出ると、空はすっかり晴れ渡り、街を離れる前に時計台兼歴史博物館に登る。
入場料は4レイ。ルーマニアではどこでも撮影代を別に請求される。ここではカメラ10レイ。ビデオはさらに高い。

入場前に近くにいた英語ツアーのガイドさんの説明を盗み聞きしたところ、からくり時計の位置は始めはもっと低く、時計台を高くする度に時計の位置も高く付け直したとのこと。この改装は2回行われ、内部の様子もそれにしたがって異なっているという説明の通り、階段も内装もわかりやすく違っていました。

歴史博物館の展示には地方の陶器など。

一番上は展望台。

Church on the HillとHerman Oberth広場。
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広場の方へ降りると、登るときにはほとんどなかった人影が、買い物に出ていたり、公園でチェスをしたりしてすっかり活気づいていました。

11時半の電車でBrasov(ブラショフ)行きの列車に乗る。
終点までは2時間半。

シギショーラで買出しをした人々が大きな荷物を持って我さきにと乗り込む。

駅を2つぐらい過ぎたところで、急停車。
無賃乗車の男が車掌3人により電車から下ろされる。

隣の席のおばちゃんが、切符を出して「これがなかったからね。(推測)」私に話しかけてきた。

通路を挟んだ反対側の席には、混雑した車内で、おじさんが一人で二人分の場所を占有し熟睡。

車窓からの景色を眺めながらゆっくりして。
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乗客がずいぶん減った。私の周りには誰もいない。

ふと、視線を感じて見てみると、斜め前に携帯電話のカメラを持った中学生くらいの男の子が私の写真を撮ろうとしている。お返しにこちらも写真を撮って、お互い見せ合い。

国自体はあまり豊かだとは感じないけど、携帯電話は十分に普及しているみたい。

同い年くらいの男の子達が数人集まってきた。

別に悪意は見られない。わからない言葉で笑顔で話しかけてくるけど、何を聞かれているのかわからない。

車掌がまた改札に来た。

男の子達がちょっかいを出しているのを見かねて、「近づいちゃなんねぇぜ」ばりに、男の子達を別の場所に誘導。

また周りが寂しくなった。

駅で停車。

携帯電話で写真を撮ってた男の子は、家族と買出しに出た帰りのようで、大きな麻袋5個を、停車中に急いで降ろしていた。しっかり家族の働き手。

トンネルを通過。
電気が十分でなく、階段のところにある橙色の電球以外の明かりがない為、車内はほとんど暗闇。

別の駅で停車したときに、窓の外にジプシーと思われる子供達の団体が乗り込んでくるのを見る。

発車してしばらくすると、車窓を見ていた私の背後から「Hello」。
チラッと見ると5歳くらいの男の子が赤ん坊を抱いて立っている。
視線を戻して無視していたが、再び「Hello」。
口に手を持っていて、「食べるものを下さい」ジェスチャー。

こういうときは、あげるべきなのか無視するべきなのか。

アラドで買った1日前の小さなチョコレートディニッシュが一つ入った紙袋をあげた。

次の停車駅で子供達は全員下車。
その子供達を見たら、さっきの男の子が私に気がついた。

「Thank you!」大きな笑顔で手を振って。

なんともやるせなくなった。少し涙も出た。
無視までして、ほんとに小さな手のひら程のパンしかあげてないのに。

しばらくは流れる景色も覚えずに、彼の生活を想像したり、自分の生活と比較したり、頭の中はループ回路だ。


後30分位でブラショフというくらいのところの駅。コンクリートが置いてあるだけ。
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ブラショフに着くと、同じ電車で乗ってきたと思われるジプシーが駅にごった返す。

タクシーのおじさんと思われる人が、客を探すために近づいてくるが必要ないと断る。

バスのチケットを買う為に長い列に加わる。
自分の番になってお金を払おうとするときに、カウンターに腰掛けた小さい女の子が私の肩をたたいて注意を引こうとする。

近くにいたおじさんがその女の子を怒る。

カオティックな街に、何がなんだかわからなくなってきた。


切符を買ったら、自分が乗るバスが丁度来た。
バスはベンツ製。注意書きはドイツ語だったりする。

教会の前を通り過ぎるとき、前に座っていた親子が自分の前で十字を切る。


一緒に乗ってきたひとが、ホステルの方向を教えてくれて無事到着。

荷物を置いて、Black Churchへ。
途中にあったあげパンやさん。1レイで砂糖をまぶしてもらう。小麦がいいのかすごくおいしい!道端の小さな店なのにおばちゃんは英語をしゃべる。

工事中の路地を行くとBlack Churchに。
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4レイを払う。ここでも撮影料金は10レイ程度取られる。
入り口でチケットを出すと、おじさんが、しきりに「マイ、マイ」とポスターを指差して何かを訴えている。ポスターにはパイプオルガンの写真。
どうやら、パイプオルガンコンサートが明日あることを教えてくれている様子。「マイ?」と「そうそう!」と言う感じで返答してくれる。メルシーとお礼を言って中へ。

様々なじゅうたんが下げられている。それぞれにどのような意味があるのかはわからない。全部で120近くあるらしい。ブラックチャーチは、14-15世紀に建てられた、ウィーンとイスタンブールの間ではもっとも大きなゴシック教会なのだそうだ。

自慢のパイプオルガンは4000本のパイプがあり、19世紀初頭にベルリンで製作。せっかくなので明日のコンサートも聴きたいところだけど、明日は別の場所。

広場に出た後、ロープウェーで山を登って街を一望。
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城壁があった場所の内部に茶色の屋根が並ぶ。

この山を広場から見ると、ハリウッド並みの”Brasov”が緑に浮かぶ。
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ホステルへ帰る前に感じのよさそうなレストランでルーマニアのビール、Ursusを一杯。ラベルには、”King of Beer in Romania”。
ドイツビールに匹敵するくらいおいしいです。
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posted by のだめ。 at 05:24| Comment(2) | TrackBack(0) |  ルーマニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
5年前にブラショフ私も行きましたよ!旦那のお母さんがブラショフ育ちのドイツ人なので今でも親戚がいます。私もあの揚げパン食べました。ルーマニアの食事は安くておいしいですよね。
Posted by hirschquelle at 2006年11月24日 21:38
>hirschquelleさん
”安くておいしい”ですね!
もう一泊すればよかったなぁ、ってちょっと後悔してマス。
Posted by のだめ。 at 2006年11月29日 07:45
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